この記事は、2026年10月時点の景品表示法・食品表示基準と消費者庁の資料にもとづいて書いています。個別の表示が問題になるかどうかは、商品や表示全体で判断されます。迷ったときは、お住まいの都道府県の景品表示法の担当窓口や、食品表示の担当窓口(保健所など)にご相談ください。
「手作りクッキー」「自家製ジャム」「天然酵母のパン」。手作りのお菓子やパンを売っていると、つい使いたくなる言葉ですよね。
でも、これって書いていいの? 法律にふれたりしない? と気になったことはありませんか。この記事では、食品表示診断士のリーリーが、「手作り」「自家製」「天然」などの言葉と法律の関係を、消費者庁の資料をもとに整理します。
先に結論です。
この記事の結論
- お菓子やパンの商品名や説明に「手作り」「自家製」「天然」と書くこと自体を、名指しで禁止する法律はありません(添加物の欄の「天然」など、一部の例外はあります)
- ただし、実際とちがう使い方をすると、景品表示法の「優良誤認」や、食品表示基準の「表示禁止事項」にあたるおそれがあります
- 判断のものさしは、買う人がその言葉からどう受け取るかと、実際の商品との差です



そもそも、どの法律で決まっているの?
食べ物の「言葉の使い方」に関係するのは、おもに次の2つです。
| 法律・基準 | ルールがかかる場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 景品表示法 | ラベル、商品ページ、SNS、チラシ、POPなど、広告や表示全般 | 実際よりも著しくよいものだと思わせる表示(優良誤認)などを禁止 |
| 食品表示基準(食品表示法) | 包装された食品のラベル | 実際より著しく優良・有利だと誤認させる用語や、中身を誤認させる文字・絵・写真などを禁止 |
景品表示法は、会社でも個人でも、商売として売っている人(事業者)にかかる法律です。minneやマルシェで販売している方も、事業として売っていれば含まれます。
※「体にいい」「〇〇に効く」など、健康への効果をうたう言葉には、健康増進法などのルールも関係します。この記事では、「手作り」「自家製」「天然」のような、作り方や素材のイメージを伝える言葉を中心に扱います。
判断のものさしは「買う人の受け取り方」
消費者庁は、飲食店のメニュー表示について出した資料の中で、優良誤認にあたるかどうかを次のように説明しています。
優良誤認表示に当たるか否かについては、実際のものとその表示から受ける一般消費者の印象・認識との間に差が生じて、その表示が商品・役務の内容について著しく優良であると示すものといえるか否かによって判断されます。
消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」Q-1
そして、その差があるかどうかは、社会常識や言葉のふつうの意味、ほかの法令などで決められている定義などを考えて、ひとつずつ判断するとしています。つまり、「この言葉はOK」「この言葉はNG」という一覧があるわけではなく、言葉と中身が合っているかがすべてです。
問題になるのは「実際とちがう」ときだけ、と覚えておくと考えやすいですよ。
「手作り」:法律の定義はない。だからこそ実際に合わせる
じつは、食品表示基準にも景品表示法にも、「手作り」という言葉の定義はありません。なので、「手作り」と書くこと自体は自由です。
ただ、「手」がつく言葉には、食品によって決まりがあるものもあります。たとえば麺類です。
- 手打ち:生めん類の業界のルール(公正競争規約)で、こねる工程だけは機械でもよく、それ以外の、のばす・切るなどの工程はすべて手作業で行うこと、などと決められています(消費者庁の資料より)
- 手延べ:乾めん類は、食品表示基準で「手延べ」と名乗れる作り方が決められています
消費者庁の資料でも、機械打ちの麺なのに「手打ち麺」と書くのは問題になる、とされています(Q-29)。お菓子の「手作り」には決まった定義がないぶん、「自分で作っていないものに使わない」ことが大切です。
- OKの例:自分で生地を作って焼いたクッキーに「手作りクッキー」
- 注意したい例:ほかの工場で作ってもらった商品や、完成品を仕入れて詰め直しただけの商品に「手作り」
オーブンやミキサーなどの道具を使うこと自体は、ふつう「手作り」のイメージとぶつかるものではないと考えられます。迷ったら、「買う人が知ったら、がっかりしないか」を考えてみてください。
「自家製」:一から作ったものにだけ使う
「自家製」については、消費者庁が具体的な例を出しています。飲食店で「自家製パン」と書いているのに、市販のパンを出していたケースです。
「自家製パン」との表示から、一般消費者は、一般的には、その店舗で一から丁寧に作り上げたパンが提供されていると認識するものと考えられます。
消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」Q-28
このケースは「景品表示法上問題となります」とされています。手作りのお菓子に当てはめると、たとえばこんな場面です。
- 市販のジャムを使ったクッキーを「自家製ジャムのクッキー」と書く
- 市販のあんこを使った和菓子を「自家製あん」と書く
- 仕入れた焼き菓子を、袋に詰め直して「自家製」と書く
「天然」:いちばん注意が必要な言葉
「天然」は、買う人に「人の手を加えていない」「安全そう」という強い印象を与えやすい言葉です。後で紹介する日本パン技術研究所の見解でも、消費者は「天然」という言葉に強い安心感を持っている、と指摘されています。
食品によっては「天然」の使い方に決まりがある
食品表示基準では、みそ・しょうゆ・食酢・乾燥わかめなど一部の食品について、「天然」「自然」を書けない、または条件を満たしたときだけ書ける、という決まりがあります。お菓子やパンにはこうした個別の決まりはありませんが、「天然」の言葉が特別に扱われていることがわかります。
添加物の欄には「天然」と書けない
添加物は、化学的に合成したものも、植物などからとったものも、区別せずに表示するルールです。消費者庁は、添加物の表示に「天然」やそれに似た言葉を使うことを認めていません。「天然着色料」のような書き方はできないので、「着色料(紅麹)」のように書きます。
同じ考え方で、「合成着色料不使用」「人工甘味料不使用」のように、「合成」「人工」「天然」などの言葉と「不使用」を組み合わせた表示も、誤解をまねくおそれがあると整理されています。
あわせて読みたい食品表示のよくある間違い9選|ハンドメイドお菓子で違反になりやすいポイント「天然酵母」はどう書けばいい?
手作りパンでよく見る「天然酵母」にも、法律の定義はありません。パン業界の研究機関である日本パン技術研究所は、2007年に出した見解の中で、次のように説明しています。
- パンに使う酵母は、市販のイーストもふくめて生物学的にはすべて酵母。あえて「天然」とつけるなら、すべての酵母が天然酵母と言えてしまう
- 「天然酵母」という言葉は、「安全」「ヘルシー」という実態にそぐわないイメージを持たれやすい
- かわりに、「レーズン発酵種」「リンゴ種」「ホップス種」「酒種」など、何から起こした発酵種かがわかる名前がすすめられる
この見解は法律ではありませんが、売る側の考え方として参考になります。自分でレーズンから種を起こしているなら、「自家製のレーズン発酵種」のように書くと、こだわりも正確に伝わります。イーストもいっしょに使っているのに、天然酵母だけで作ったように見せるのは避けましょう。
ほかにも気をつけたい言葉
消費者庁の資料などで、問題になる例として挙げられている言葉をまとめました。
| 言葉 | 問題になる使い方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 生クリーム | 植物油のホイップクリームを使っているのに「生クリーム使用」 | 消費者庁Q-30 |
| 〇〇使用 | 「カマンベールチーズ使用」と書いて、ほかのチーズも混ぜている | 消費者庁Q-31 |
| フレッシュ | 既製品のジュースを「フレッシュジュース」 | 消費者庁Q-35 |
| 焼きたて | 焼きたてではないパンに「焼きたて」と誤認させる表示 | 包装食パンの公正競争規約 |
| 最高級・極上 | 客観的な根拠のない「最高級」「極上」 | 包装食パンの公正競争規約 |
公正競争規約は、業界ごとに決めた表示のルールで、規約に参加している事業者が守るものです。ただ、「根拠のない最高級はダメ」という考え方は、景品表示法の考え方と同じです。「日本一」「最高級」「No.1」などは、根拠を説明できないなら使わないのが安全です。
あわせて読みたい「国産小麦使用」と書くなら割合も必要?特色のある原材料の表示ルールと書き方【お菓子・パン販売者向け】違反するとどうなる?
景品表示法では、優良誤認の表示をした事業者に対して、消費者庁などが表示をやめるよう命じる(措置命令)ことができます。都道府県が対応することもあります。
- 表示の根拠になる資料を出すよう求められ、期間内に出せないと、優良誤認の表示とみなされます(第7条第2項)
- 2024年10月に施行された改正で、著しく優良だと誤認させる表示をした場合の罰則(100万円以下の罰金)もできました(第48条)
容器包装のラベルについては、食品表示法にもとづく指示や命令などのしくみもあります。
あわせて読みたい食品表示法の違反と罰則|ミスが見つかったらどうなる?書く前のチェックリスト
- その言葉は、実際の作り方・材料と同じか
- 買う人がその言葉から受け取るイメージと、実際に大きな差がないか
- 「最高級」「天然だから安全」など、根拠を説明できない言葉を使っていないか
- ラベルだけでなく、商品ページやSNSの説明文も同じように見直したか
「毎朝、生地から仕込んで焼いています」「レーズンから起こした種で、ひと晩発酵させています」のような具体的な説明のほうが伝わります。
よくある質問
「ハンドメイド」と書くのはいい?
「手作り」と同じ考え方です。自分で作ったお菓子なら問題ありません。作っていないものに使わないことが大切です。
「手作り」と書かないといけない?
いいえ。「手作り」は書かなければいけない表示ではありません。書くかどうかは自由です。
食品表示(一括表示)の名称に「手作りクッキー」と書いていい?
一括表示の「名称」は、その食品の一般的な名前を書く欄です。「手作り」はアピールの言葉なので、名称は「焼菓子」や「クッキー」とし、「手作り」は商品名やパッケージの表側で使うのがおすすめです。
あわせて読みたい手作りお菓子の食品表示の作り方|今日から一括表示が作れる6ステップまとめ
- お菓子やパンの商品名や説明に「手作り」「自家製」「天然」と書くこと自体を、名指しで禁止する法律はない
- 問題になるのは、買う人の受け取り方と、実際の商品に差があるとき(景品表示法・食品表示基準)
- 「手作り」は法律の定義がないぶん、自分で作っていない商品には使わない
- 「自家製」は一から作った部分にだけ。市販品を使った部分には使わない
- 「天然」は安全・健康と結びつけない。添加物の欄には書けない。「天然酵母」は「レーズン発酵種」などの書き方も
- ラベルだけでなく、商品ページやSNSも同じルール
言葉は、商品のよさを伝える大切な道具です。実際に合った言葉を選べば、こだわりはきちんと伝わりますよ。
出典・参考
出典・参考資料の一覧を開く(8件)
この記事は、公開されている法令・行政資料などをもとに、食品表示検定中級の資格者が一般的な情報としてまとめたものです。個別の判断は、お住まいの都道府県の景品表示法の担当窓口や、食品表示の担当窓口(保健所など)にご相談ください。
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