ハンドメイドでお菓子やパンを売るとき、最後に手が止まりやすいのが食品表示です。レシピも包装も決まったのに、「ラベルに何をどう書けばいいのか分からない」——そんな声をよく聞きます。
そこで今回は、食品表示でつまずきやすいポイントを9つにまとめました。どれも「知らなかった」「うっかり」で起こりがちなものばかりです。これから販売を始める方も、すでに販売している方も、一度チェックしてみてください。
その前に:法律がとくに重く見ている「4つの項目」
9つを見ていく前に、ひとつだけ前提を共有させてください。
食品表示にはたくさんの項目がありますが、そのなかでも名称・保存の方法・消費期限又は賞味期限・アレルゲンの4つは、法律上とくに重く扱われています。食品表示法にもとづく内閣府令(平成27年内閣府令第11号)第1条で、「食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項」として指定されているためです。
そのことは、表示を省略できる規定を見てもわかります。たとえば容器包装がとても小さい場合(表示可能面積がおおむね30平方センチメートル以下)、原材料名や添加物の表示は省略できます。それでも名称とアレルゲンは、省略できる項目のリストに一度も出てきません。
ただし、「うっかり間違えたら、すぐ処罰される」という話ではありません。刑事罰には原則として故意(わざとやったこと)が必要ですし、実際の運用では、まず行政から改善を求められるところから始まります。この流れについては食品表示のミスが見つかったらどうなる?罰則までの本当の流れにまとめました。
お伝えしたいのは、見直す順番を決めるなら、まずこの4つからということです。このあとの①〜④が、ちょうどその4項目にあたります。
①「名称」の欄に、商品名を書いてしまっている
一括表示のいちばん上にある「名称」の欄。ここに商品名やブランド名を書いてしまうのは、とても多い間違いです。
食品表示基準では、名称は「その内容を表す一般的な名称を表示する」と決められています(第3条第1項)。「森のクッキー」「まいにちのおやつ」といった商品名は、その食品が何なのかを表していないため、名称欄には使えません。
名称欄に書くのは、「焼菓子」「パウンドケーキ」「食パン」のように、見ればおおよその中身がわかる言葉です。
「でも、商品名も見せたい」という方へ。商品名はパッケージの表側に大きく書いて問題ありません。さらに、「名称」は一括表示の枠の中ではなく、商品の主要面に表示することもできます(第8条第4号)。商品名のすぐ下に「焼菓子」と添える、という見せ方も可能です。
なお、「クッキー」「ビスケット」のように、業界団体の公正競争規約で使い分けの基準が決められている名称もあります。迷ったときは「焼菓子」のように、内容を素直に表す言葉を選んでおくのが安全です。
②「保存の方法」が書かれていない、またはざっくりしすぎている
保存の方法は、「食品の特性に従って表示する」と決められています(第3条第1項)。なんとなく決まり文句を書くのではなく、その食品にとって本当に必要な条件を書く、ということです。
要冷蔵・要冷凍のものは、「10℃以下で保存してください」「-18℃以下で保存してください」のように、温度を具体的に書きます。生クリームやカスタードを使った生菓子など、常温では傷むものでは欠かせません。
じつは、省略できる場合もあります
意外と知られていないのが、この省略規定です。「常温で保存すること以外に、その保存の方法に関し留意すべき事項がないもの」は、保存の方法の表示を省略できます(第3条第3項)。
常温に置いておいて特に問題のない焼き菓子であれば、これに当てはまることがあります。ただし「高温多湿を避けて」という条件が必要なら、それは「留意すべき事項がある」ということなので、省略せずに書きます。
迷ったときは、書いておくほうが安全です。「直射日光・高温多湿を避けて保存してください」と書いてあって困る人はいません。
③期限表示を「枠外記載」とだけ書いている
まず、消費期限と賞味期限のどちらを書くかです。食品表示基準では、品質が急速に劣化しやすい食品には「消費期限」、それ以外には「賞味期限」を表示すると決められています(第3条第1項)。焼き菓子の多くは賞味期限、生クリームを使った生菓子は消費期限、というイメージです。
また、製造または加工した日から賞味期限までが3か月を超える場合は、「年月」だけの表示にすることもできます(同じく第3条第1項)。日付の印字が負担な方は、覚えておくと役に立ちます。
そして本題です。包装が小さく、一括表示欄に期限が書ききれない場合、枠外に表示すること自体は認められています。ただし、その場合は「どこに書いてあるか」を具体的に示す必要があります。単に「枠外記載」「別途記載」とだけ書くのは、消費者にとってどこを見ればいいのか分からないため、適切とはいえません。
「賞味期限:袋底に記載」「賞味期限:この面の右上に記載」のように、具体的な場所を書きましょう。
④アレルゲン表示の見落とし
もっとも見落としやすいのが、市販材料に含まれるアレルゲンです。チョコレートの乳成分、マーガリンやショートニングの乳成分、市販クリームの卵など、意外なところにアレルゲンが隠れています。自分では入れていなくても、材料の中に入っていれば表示が必要です。
「小麦粉」「ピーナッツバター」のように、名前そのものにアレルゲンが含まれている場合は、あらためて書く必要はありません。それ以外は「(卵を含む)」のような表示が必要です。義務表示9品目(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生・カシューナッツ)は、特に慎重に確認してください。
このうちカシューナッツは、2026年4月1日に義務表示に加わったばかりです。2028年3月末までは経過措置期間があり、それまでは以前のルール(推奨表示)でも認められます。ただ、猶予があるうちに切り替えておくほうが、あとで慌てずに済みます。ナッツを使う方は、今のうちに表示を見直しておきましょう。
なお、先ほど触れたとおり、アレルゲンは「省略できる」規定に一度も登場しません。容器包装がどれだけ小さくても、作った場所でそのまま販売する場合の特例(第5条)にあてはまっても、アレルゲンだけは残ります。ラベルづくりで最後まで削れない項目、と覚えておいてください。
⑤原材料が「重い順」に並んでいない
ここからは、4項目以外でつまずきやすいポイントを見ていきます。
原材料は、原材料に占める重量の割合が高いものから順に、その最も一般的な名称で表示するのがルールです(第3条第1項)。レシピをリニューアルして配合を変えたのに、原材料名の順番を直し忘れる——これは、意外と起こりがちなミスです。配合を変えたら、並び順も必ず見直しましょう。
「あんこ」「チョコレート」は、中身も書く(複合原材料)
もうひとつ、ハンドメイドで多いのが複合原材料の書き忘れです。あんこ、チョコレート、カスタードクリームのように、それ自体が複数の原材料からできているものを使った場合は、その名称のうしろに括弧を付けて、中身も重い順に書きます。
たとえば「つぶあん(小豆、砂糖、食塩)」のような形です。中身が3種類以上あるときは、割合が3位以下でかつ5%未満のものを「その他」とまとめることもできます。
ただし、次の場合は中身の表示を省略できます。
- その複合原材料が、製品全体の5%未満のとき
- 複合原材料の名称から、その原材料が明らかなとき
⑥原材料と添加物が区分されていない
原材料と添加物は、明確に区分して表示する必要があります。「/(スラッシュ)」で区切る、改行する、「添加物」という項目名を別に設けるなど、方法はいくつかありますが、区分せずにすべてを並べて書いてしまうのはNGです。
添加物もまた、添加物に占める重量の割合が高いものから順に書きます。そして、市販の材料(あんこ、マーガリン、チョコレートなど)に含まれる添加物も、原則として自分の商品の添加物としてまとめて表示します。パッケージ裏の表示を確認する習慣をつけましょう。
ただし、ここには例外があります。加工助剤とキャリーオーバーは、表示しなくてよいと決められています(第3条第1項)。
- キャリーオーバー…原材料の製造・加工の段階では使われていたけれど、自分の商品づくりでは使っておらず、しかも効果を発揮できる量より少ししか残っていない添加物。たとえば、味つけに使った醤油に含まれていた保存料は、その醤油を保存するためのもので、できあがったお菓子の側では保存料として働いていません。この場合、添加物としての表示は不要です。
- 加工助剤…製造の途中で使うけれど、完成前に取り除かれるもの、または最終的にごく微量しか残らず、その成分による影響を食品に及ぼさないもの。
気をつけたいのは、キャリーオーバーで添加物として書かなくてよい場合でも、その中にアレルゲンが含まれていれば、アレルゲン表示は必要だという点です。「添加物欄に書かなくていい=何も書かなくていい」ではありません。
⑦「無添加」などの強調表示を、なんとなく使っている
単に「無添加」とだけ書くのは、消費者庁のガイドラインで問題になりやすい表現です。書くなら「着色料不使用」のように、何を使っていないかを具体的に。そして、その成分を本当に一切使っていないことが前提です。
このガイドラインには、パッケージの切り替えなどに配慮した「見直し期間」がありましたが、令和6年3月末ですでに終了しています。つまり今は猶予なく、ガイドラインに沿った表示が求められている状態です。「前から使っている表現だから大丈夫」ではなく、今のうちに一度見直しておきましょう。
良かれと思って書いた一言が、あとで指摘の対象になることもあります。迷ったら書かない、という選択も検討しましょう。
⑧ラベルの文字が小さすぎる・手書きになっている
意外と見落とされがちなのが、文字の大きさと色のルールです。食品表示基準第8条では、次のように決められています。
- 表示に使う文字は、8ポイントの活字以上の大きさ(第9号)
- ただし、表示可能面積がおおむね150平方センチメートル以下のものは5.5ポイントの活字以上でよい(第9号)
- 表示に用いる文字と枠の色は、背景の色と対照的な色にする(第8号)
- 邦文で、購入する人が読みやすく、理解しやすい用語により正確に表示する(第1号)
小さめの焼き菓子の袋なら、5.5ポイントまで小さくできる場合があります。「入りきらない」と悩んでいる方は、このルールを知っておくと選択肢が広がります。逆に、大きめのパッケージで5.5ポイントを使うのはNGです。
色も見落としがちです。クラフト紙に薄い茶色の文字、透明フィルムに白文字——おしゃれですが、背景と対照的でなければ基準を満たしません。
そして手書きについて。基準の条文は「活字」を前提に書かれており、あわせて「読みやすく、理解しやすいような用語により正確に」とも定められています。このため、自治体の手引きでも印字が原則とされています。手書きは誤字や表記漏れ、読み間違いも起きやすくなります。パッケージのデザインで温かみを出しつつ、表示ラベルの部分はきちんと印字する——という分け方がおすすめです。
⑨詰め合わせ商品で、食品ごとの表示が漏れている
クッキーとフィナンシェの詰め合わせのように、複数の加工食品で構成される商品では、それぞれの食品ごとに、原材料を分けて書くのが基本です(第3条第1項)。
具体的には、重量の割合が高い構成要素から順に名前を挙げ、それぞれのうしろに括弧を付けて中身を書きます。「クッキー(小麦粉、砂糖、バター、卵)、フィナンシェ(卵白、砂糖、バター、アーモンドプードル)」のような形です。添加物も、同じように構成要素ごとに書くことができます。
アレルゲンも、当然それぞれについて必要です。「まとめて簡略化」はできません。
期限は「もっとも短いもの」に合わせる(またはそれぞれ表示する)、保存方法は「もっとも厳しい条件」に合わせる、というのが一般的な考え方です。アイテム数が増えるほど、抜け漏れが起きやすいポイントなので、詰め合わせの組み合わせを変えたときは必ず見直しましょう。
番外編:小規模なら栄養成分表示を省略できることも
加工食品には原則、栄養成分表示(熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量)が義務付けられています。ただし、消費税の免税事業者(原則として課税売上高1,000万円以下)、または中小企業基本法上の小規模企業者(従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下)にあたる場合は、この表示を省略することができます(栄養表示をしようとする場合を除く)。
省略できるのは、この栄養成分表示だけです。名称・保存の方法・期限・アレルゲン・原材料名・添加物など、他の項目はこの条件に関係なく、通常どおり表示が必要です。また、パッケージに「低糖質」のような栄養に関するアピールを書きたい場合は、この省略は使えず、きちんと栄養成分表示をする必要があります。
始めたばかりの小規模なハンドメイド販売であれば、多くの方がこの条件に当てはまります。「栄養成分表示までは手が回らない…」という方は、まず自分がこの対象になるかどうかを確認してみてください。省略できるのはあくまで「義務」の話で、書いてはいけないわけではありません。書きたい場合は、もちろん表示できます。
まとめ
まずは、法律上とくに重く扱われている4項目から。
- 名称は、商品名ではなく「内容を表す一般的な名称」を。一括表示の枠の外(商品の主要面)に書くこともできる。
- 保存の方法は、食品の特性に従って具体的に。常温保存で留意事項がなければ省略できる。
- 期限は、急速に劣化するものは消費期限、それ以外は賞味期限。枠外に書くなら場所を具体的に。
- アレルゲンは、市販材料の裏の表示まで確認する。省略規定に一度も登場しない、最後まで削れない項目。
そのうえで、残りの5つ。
- 原材料は重量の割合が高い順に。あんこなどの複合原材料は中身も書く。
- 原材料と添加物は明確に区分。市販材料由来の添加物も原則表示(加工助剤・キャリーオーバーは除く)。
- 「無添加」などの強調表示は、何を使っていないか具体的に(見直し期間は令和6年3月末で終了済み)。
- 文字は8ポイントの活字以上(150平方センチメートル以下は5.5ポイント以上)、背景と対照的な色で、手書きではなく印字する。
- 詰め合わせ商品は、食品ごとに分けて表示する。
どれも、知っていれば防げるミスばかりです。ただ、いきなり全部を完璧にしようとしなくて大丈夫。まずは4項目、そのあとで残りの5つ——この順番で見直していけば、ラベルは着実に整っていきます。
お菓子づくりと同じで、表示づくりも一度手順を覚えてしまえば、次からはぐっとラクになります。
出典・参考
- e-Gov法令検索「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)
- e-Gov法令検索「食品表示法第六条第八項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令」(平成27年内閣府令第11号)
- 消費者庁「早わかり食品表示ガイド」(令和7年4月版・事業者向け)
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(カシューナッツの義務表示化)
- 秋田県「食品表示事例集(菓子類編)」
この記事についてのお願い
本記事は2026年7月時点の食品表示基準および関係する法令にもとづき、食品表示検定中級の資格者が一般的な情報としてまとめたものです。法令は改正されることがあり、この記事の内容が最新でなくなる場合があります。
個別の商品でどう表示すべきかは、お住まいの自治体の食品表示担当窓口・保健所にご確認ください。誤りにお気づきの際は、お問い合わせからご指摘いただけると助かります。
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