賞味期限の決め方|手作り焼き菓子の期限設定をガイドラインの原文から解説

「クッキーの賞味期限、なんとなく1か月にしてるけど、これで合ってるのかな……」

一括表示の項目のなかで、いちばん決め方に迷うのが期限です。名称も原材料名も、調べれば書き方がわかる。でも期限だけは、どこにも正解が載っていません。

それもそのはずで、期限は作った人が自分で決めるものだからです。国が「クッキーなら何日」と決めてくれることはありません。

とはいえ、好きに決めていいわけでもない。決め方の考え方は、国のガイドラインにちゃんと書かれています。この記事では、その中身を、手作りの焼き菓子に当てはめながら説明していきます。

この記事でわかること
・期限は誰が、どうやって決めるのか
・消費期限と賞味期限、どちらを選ぶか
・検査に出せないとき、何を根拠にすればいいか
・よく聞く「安全係数0.8」がどこから来て、どこへ消えたのか
・焼き菓子でつまずきやすい3つのポイント

先に、ひとつお知らせ
期限の決め方を検索すると、いまも多くのページが「平成17年に厚生労働省と農林水産省が作ったガイドライン」を根拠に説明しています。
でもこのガイドラインは2025年3月に全面的に改正され、いまは消費者庁のものになりました。しかも、あとで出てくる「安全係数0.8」のように、中身が変わった部分があります。
この記事は、改正後の内容で書いています。

まず結論:決めるのは、あなたです

消費者庁は、期限を決めるのは「その食品をいちばんよく理解している人」だと説明しています。手作りのお菓子なら、それは作っているあなた自身です。

保健所に電話しても「30日にしてください」とは言ってもらえません。品目ごとの決まりも、あえて作られていません。商品が多様すぎて、一律のルールにできないからです。

だから必要なのは、「なぜその日数にしたのか」を自分で説明できる状態にしておくこと。これが記事全体を通しての目標になります。

消費期限と賞味期限、どちらを選ぶ?

最初の分かれ道がここです。2つの違いは、ざっくり言うとこうなります。

期限の種類 意味
消費期限 安全に食べられる限界の日。過ぎたら食べないほうがいい
賞味期限 おいしさを含めた品質が保たれる期限。過ぎてもすぐ危険になるわけではない

消費者庁は、消費期限を使う例として弁当・そうざい・生菓子類を、賞味期限を使う例としてスナック菓子・缶詰などを挙げています。

焼き菓子は「品質の劣化がゆるやかな食品」に入るので、ふつうは賞味期限です。

ただし「焼き菓子だから賞味期限」は危ない

同じ焼き菓子でも、水分が多いものや、生クリーム・カスタード・フレッシュフルーツを使ったものは傷むのが速く、消費期限を選ぶべき場合があります。

期限の種類 あてはまりやすいもの
賞味期限 クッキー、ビスケット、サブレ、ラスク、メレンゲ菓子
→ 焼き上げて水分が少なく、変化がゆっくり
消費期限 ベイクドチーズケーキ、ロールケーキ、生どら焼き(クリームを挟んだどら焼き)、カスタード入りの焼き菓子、フレッシュフルーツのタルト
→ 水分が多く、菌が増えやすい

迷ったときの判断の軸は、日数でも「冷蔵かどうか」でもありません。

先に来るのはどっち?
「食べたら危ない」が先に来る → 消費期限
「おいしくなくなる」が先に来る → 賞味期限

同じ「どら焼き」でも、あんこだけなら賞味期限、生クリームを挟んだ生どら焼きなら消費期限。商品名ではなく、中身で決まります。

フィナンシェやパウンドケーキのようなしっとり系は、どちらもありえます。配合や包装で変わるので、最後は自分の商品を実際に置いてみて判断してください。

「5日以内なら消費期限」は、もう古い情報です
この線引きは1995年の通知にあったものですが、「用語の定義に合っていない」という理由で2008年に取り下げられています。消費者庁も現在は推奨していません。日数ではなく、上の考え方で判断してください。

期限を決めるまでの流れ

やることは、意外とシンプルです。

  1. 実際に売るときと同じ包装・同じ保存条件で商品を置く
  2. 日数を追って、変化を見る
  3. 「ここまでは大丈夫」という日を見つける
  4. そこから少し余裕を取って、期限を決める

1がいちばん大事です。裸で置いて確かめても、袋に入れて売る商品の根拠にはなりません。脱酸素剤を入れるなら入れた状態で、常温で売るなら常温で置きます。

何を見ればいい?

見るポイントは大きく3つ。

何を見るか
見た目・においなど 色、つや、形、におい、味。人の感覚で確かめる(官能検査)
数値で測るもの 油の酸化の進み具合、水分など(理化学試験)
菌の検査 菌が増えていないかを調べる(微生物試験)

「この項目をやればOK」というリストは、あえてありません
じつは古いガイドラインには、測るべき項目名がずらりと並んでいました。ところが改正で、そのリストが消えました。
理由は「商品の特性を考えずに一律の項目を課すのは望ましくない」「必要以上に期限を短くしてしまうことがある」から。
つまり、決まったリストをこなすのではなく、自分の商品で何が先に悪くなるかを考えて選ぶのが正しいやり方、ということです。バターの多いクッキーなら油の酸化、しっとり系なら水分と菌、というふうに。

「安全係数0.8」の話

期限設定を調べると、必ず出てくるのが「安全係数0.8を掛ける」という話です。試験で60日もったなら、0.8を掛けて48日にする、という考え方ですね。

これ、ずっと業界の慣習だと思われていますが、もともとは国のQ&Aに書かれていた数字でした。「ばらつきが少ないものは0.8以上を目安に」とはっきり示されていたのです。

ところが2025年3月の改正で、この記述は削除されました。
代わりに書かれたのが、こちらです。

安全係数は1に近づけること、差し引く日数は0に近づけることが望ましい」

0.8を掛けて短くしなさい、から、できるだけ削らないで、へ。方向が逆になりました。

背景にあるのは食品ロスの削減です。念のためと短くしすぎると、まだ食べられるものが捨てられてしまう。だから根拠のある日数にできるだけ近づけましょう、という流れです。

とはいえ、手作りは製造条件のばらつきが大きいもの。慣れないうちは余裕を持たせて構いません。大事なのは「0.8だから」ではなく、なぜその余裕を取ったのかを自分で言えることです。「オーブンの焼きムラがまだ安定しないから、10日ぶん余裕を見た」——それで十分な理由になります。

検査に出せないときは、どうする?

個人で作っている人が、菌の検査や成分の分析を毎回するのは現実的ではありません。そこは国の側も想定していて、代わりの手が4つ示されています。

1|全部の検査をする必要はない

すべての商品に、すべての項目の検査をしなければいけない——ということはありません。業界団体が作ったマニュアルなどを参考に、見る項目を絞ってよいとされています。

2|業界団体のマニュアルを使う

焼き菓子にいちばん近い公開資料が、全国ビスケット協会の期限設定ガイドラインです。油脂を使うものは油の酸化を、水分が多めのものは水分活性を見る、というように、商品ごとに測る項目を選ぶ考え方が示されています。

ただしこれは2005年に作られたもので、その後改訂されていません。ベースにしている国のガイドラインが2025年に改正されているので、内容は追いついていないことになります。
「項目の選び方」の参考として読み、細かい運用は最新の国のガイドラインで確認してください。

3|似た商品のデータを参考にする

特性が似ている食品の試験・検査の結果を参考にして期限を決めることも認められています。ただしここには、大きな注意点があります。

「よその商品が90日だから、うちも90日」は根拠になりません
参考にしていいのは試験や検査の結果であって、他社のパッケージに書いてある日数ではないからです。
他社の90日は、その会社のレシピ・水分・包材・製造環境がぜんぶ合わさって出てきた数字。何をどう確かめてそうなったのかが、外からはわかりません。
これは長い短いの問題ではありません。自分の試作で120日もちそうでも、「よそが90日だから」で決めたら、聞かれたときに「他社がそうだったので」としか言えません。

さらに、借りたデータを理由に期限を長くする方向へ動かす場合は、別途しっかりした裏づけが必要だとされています(この一文は2025年の改正で新しく加わりました)。

では、何なら参考にできる?
・業界団体が公開している試験データやマニュアル
・取引先や原料メーカーからもらった、実際の試験結果
・自分の過去の商品で、レシピや包装が近いものの記録

共通しているのは「どんな条件で、何を測って、どう変わったか」がわかることです。

なお「似ている」の判断も、思ったより厳しめに。同じクッキーでも、バターの量や、脱酸素剤入りかどうかで日持ちは変わります。名前が同じというだけでは「似ている」とは言えません。

4|自分の記録を積み上げる

これまでの経験や知見を活かして期限を決めることも、正式に認められています。

試作のたびに、いつ・どんな包装で・何日目にどう変わったかをメモしておく。それ自体が立派な根拠になります。いちばん地味ですが、いちばん確実な方法です。

「検査機関に出さないとダメ」ではありません
民間の分析機関に依頼するのはもちろん有効ですが、それを義務づけた法律や通知はありません。予算に余裕ができたら考える、で大丈夫です。

焼き菓子でつまずきやすい3つのこと

1|期限を決めているのは、たいてい油の酸化

焼き菓子は水分が少ないので、菌はあまり増えません。

ではなぜ、日持ちに限りがあるのか。バターが酸化するからです。

しばらく置いたクッキーから、古い油のようなにおいがすることがありますよね。あれが酸化です。菌が増えていなくても、油が酸化すれば風味は落ちます。

そしてバターが多いレシピほど、酸化は早く進みます。だから焼き菓子の賞味期限は、たいていこの酸化がどこまで進むかで決まります。

やっかいなのは、見た目にはほとんど出ないこと。だから試作を保存して確かめるときは、色や形だけでなく、毎回においをかいでください。変化に最初に気づけるのは、たいてい鼻です。

酸化を進める原因は、はっきりしています。

原因 対策
遮光性のある包材を使う。透明な袋から変えるだけでも効く
空気 空気を通しにくい包材で、しっかり密封する
直射日光と高温多湿を避けて保管する

この3つを押さえるだけで、日持ちはずいぶん変わります。レシピを変えずにできる対策なので、期限を延ばしたいときは、まずここから見直してみてください。

数値で確かめたいとき
酸化の進み具合は、酸価過酸化物価という2つの数値で測れます。全国ビスケット協会のガイドラインでも、油脂を使うお菓子はこの2つを見るとされています。
検査機関に依頼するときは、この名前を伝えれば通じます。

2|脱酸素剤は、万能ではない

日持ちを延ばそうと脱酸素剤を入れる。よくある方法ですが、消費者庁は2025年の改正で新たに注意を促しました。
酸素がなくなれば油の酸化は抑えられます。でも同時に、酸素のない環境を好む菌にとっては都合のいい状態になります。真空包装も同じです。
「脱酸素剤を入れたから、その分期限を延ばそう」——これはやめてください。延ばすなら、延ばした状態で確かめ直す必要があります。

3|水分活性に、決まった基準はない

「水分活性がいくつ以下なら安全」という国の基準は、焼き菓子にはありません。菌が増えやすいかどうかを判断するためのものさしのひとつとして使ってください。

期限は、保存方法とセット

期限は、単独では意味を持ちません。「決められた方法で保存したら」という条件つきの数字だからです。

さらに、「未開封であること」も前提です。これは法律の条文には書かれていませんが、ガイドラインではっきり示されています。開けてしまえば、常温で置ける商品でも空気中の菌で傷み始めます。

つまり、期限を確かめたときの保存条件を、そのまま保存方法欄に書く必要があります。常温で置いて確かめたのに「要冷蔵」と書いたら、期限の根拠が崩れてしまいます。

2025年の改正で加わった、ちょっとした推奨
常温で売る商品は、保存方法欄に想定した温度や湿度を書き添えるのが望ましいとされました。
背景にあるのは、気温の上昇です。夏の店頭や配送中の温度まで見越して期限を決めましょう、という考え方が明記されました。
「直射日光・高温多湿を避けて常温で保存してください」に、想定した温度帯を足しておくと、より親切な表示になります。

ラベルへの書き方

年月日か、年月か

原則は年月日です。ただし製造日から賞味期限までが3か月を超える場合は、年月だけの表示でもOKです。長く日持ちする焼き菓子なら、こちらを使えます。

この省略が使えるのは賞味期限だけで、消費期限には使えません。

年月にするときは、切り捨てて前の月を書きます。

決めた期限 年月表示にすると
2026年4月10日 2026年3月(前の月に切り捨て)
2026年4月30日 2026年4月(末日なのでそのまま)

書き方の細かいルール

元号でも西暦でもかまいません。区切り方もいろいろ認められていますが、押さえておきたいルールが4つあります。

順番 必ず「年 → 月 → 日」の順に並べる
事項名 「賞味期限」「消費期限」の文字を付ける。数字だけでは何の日付かわからない
スラッシュ 「/」を使うときは全角にし、前後に半角スペースを入れる(「1」と読み間違えられないため)
点を省くとき 「26.9.6」の点を省いて詰めるなら、1桁の月日に0を足して「260906」とする

やりがちなミス:ロット番号とくっつける
期限のうしろにロット番号をそのまま続けて「260906A63」のように書くのは、誤った表示例として名指しされています。どこまでが日付かわからなくなるからです。
「賞味期限 26.9.6 LOT A63」のように、はっきり分けて書いてください。

やってはいけないこと

1|根拠なく期限を決める

「なんとなく1年」で表示して、それが原因で健康被害につながるおそれがある場合、食品衛生法が禁じている「虚偽・誇大な表示」にあたるとされています。マナーの問題ではなく、法律の問題になりえます。

2|期限を貼り替える

「本当は90日もつのに、余裕を見て60日で出しておき、売れ残ったら90日に貼り替える」——このやり方について、消費者庁は「直ちに法律違反ではないが、消費者の信頼を損なうので好ましくない」としています。

これはあくまで自分で確かめた期限の範囲内での話です。確かめた期限を超えて延ばすのは、1つ目の「根拠なく決める」に該当します。

なお現行のQ&Aでは、範囲内の貼り替えについても「適切ではないため慎むべき」と、より強い言い方になっています。基本的にはやらないものと考えてください。

根拠の記録は、残しておく

ガイドラインは、期限を決めた根拠の資料をきちんと保管し、聞かれたら説明できるようにしておくことを求めています。Q&Aではさらに一歩進んで、ウェブサイトに載せるなどして自分から情報提供するよう努めるべき、とも書かれています。
保存年数の決まりはありませんが、表示した期限を過ぎてしばらくは残しておくと安心です。

記録することは、たったこれだけ。
・いつ作ったか
・どんな包装にしたか(脱酸素剤の有無も)
・どこに何度くらいで置いたか
・何日目に、どう変わったか

ノートでもスマホのメモでも構いません。これが積み上がるほど、次の商品の期限が決めやすくなります。

まとめ

  • 期限を決めるのは行政ではなく、作った自分。「クッキーなら何日」という決まりはない
  • 焼き菓子はふつう賞味期限。でも中身しだいで消費期限になる。判断は「危ない」と「おいしくない」のどちらが先に来るか
  • 「5日以内なら消費期限」はもう使われていない
  • 確かめるときは、売るときと同じ包装・同じ保存条件で
  • 測る項目の決まったリストはない。自分の商品で何が先に悪くなるかを考えて選ぶ
  • 「安全係数0.8」は改正で削除された。いまは「1に近づけて」=削りすぎない方向
  • 検査に出せなくてもいい。業界団体のマニュアル、似た商品の試験結果、自分の記録が根拠になる
  • 他社のパッケージの日数を真似るのは、根拠にならない
  • 焼き菓子の日持ちを決めているのは、たいてい菌ではなくバターの酸化。においで確かめる
  • 脱酸素剤で酸化は防げても、菌のリスクは上がる
  • 期限は保存方法とセット。確かめたときの条件をそのまま書く
  • 3か月を超えるなら年月表示でOK。切り捨てて前の月を書く
  • 決めた根拠は記録して残す

期限だけは、どこかから書き写せる正解がありません。だからこそ、自分の商品を自分で見て残した記録が、いちばん強い根拠になります。

まずは次の試作から、日付と変化をメモするところから始めてみてください。

一括表示の全体の書き方は、こちらの記事にまとめています。

消費期限と賞味期限の違いを、もう少しやさしく知りたい方はこちらもどうぞ。

この記事の出典

この記事は、次の資料の内容をもとに書いています。原文を確認したい方はこちらへどうぞ。

・消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月)およびその期限表示Q&A
 ※平成17年2月に厚生労働省・農林水産省が策定したものを、令和7年3月28日付の通知(消食表第290号)で全部改正し、「食品表示基準Q&A」の別添としたもの
・食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条、第3条
・食品衛生法 第20条
・消費者庁「消費期限又は賞味期限の適切な取扱いについて」(平成21年11月2日 消食表第75号)
・全国ビスケット協会「ビスケット類の期限表示設定のためのガイドライン」(平成17年7月13日)

この記事は一般的な情報をまとめた解説です。掲載内容は執筆時点のものであり、個別の食品表示の適法性を保証するものではありません。実際の表示内容は、お住まいの地域の保健所・消費者庁の最新情報をご確認のうえ、ご自身の責任で最終決定してください。

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