原材料名の「魚介類」ってなに?アレルゲン29品目の“どれでもない”表記の正体

食品表示の基本

かまぼこやちくわの袋、ナンプラーのボトル。原材料名の欄に「魚肉すり身(魚介類)」「魚醤(魚介類)」と書いてあるのを、見たことはありませんか。

ここで、ちょっと不思議なことがあります。アレルゲン(アレルギー物質)の一覧表をどれだけ探しても、「魚介類」という品目はどこにも載っていないのです。えび、かに、さけ、さば、いか……はあるのに、「魚介類」はない。

じつはこれ、品目の一覧表に載らない“番外”のアレルゲン表記。今日はその正体を、根拠のルールまで深掘りします。

まず基本から。アレルゲン表示は、いま「29品目」

アレルゲン表示には「必ず書く義務があるもの」と「書くことが推奨されるもの」の2段階があります。2026年4月1日の食品表示基準の改正で、義務側にカシューナッツが加わり、現在は次の29品目です。

義務(特定原材料)9品目
えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生・カシューナッツ

推奨(特定原材料に準ずるもの)20品目
アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・ゼラチン・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・ピスタチオ・マカダミアナッツ・もも・やまいも・りんご

この一覧、ここ数年でけっこう動いています。2024年に「まつたけ」が外れて「マカダミアナッツ」が入り、2026年4月に「カシューナッツ」が推奨から義務へ昇格、空いた推奨枠に「ピスタチオ」が入りました。木の実(ナッツ)のアレルギーが増えていることが背景にあります。

ちなみにカシューナッツの義務化には2028年3月31日までの経過措置があるので、いまお店に並んでいる商品には、新ルールのラベルと旧ルールのラベルが混在しています。「この商品、カシューナッツの表示がないな」と思っても、切り替え前のラベルかもしれない——そんな時期です。

大原則:アレルゲンは「具体的な名前」で書く

「魚介類」の話に入る前に、アレルゲン表示の大原則を2つだけ。ここを知っておくと、「魚介類」という表記がどれだけ特別かが見えてきます。

原則①:大きなくくりで書いてはいけない。たとえば小麦と大豆を使っているのに「穀類」とだけ書くのはNGです。アレルギーのある人が自分の判断に使えないからです。品目は具体的な名前で書きます。

原則②:「入っているかもしれません」は書けない。意外に思われるかもしれませんが、原材料表示の中では「〜が入っている可能性があります」という曖昧な書き方(可能性表示)は認められていません。入っているなら書く、入っていないなら書かない。表示は白黒はっきりさせるのがルールです。

つまり本来、アレルゲン表示の世界に「ぼんやりした書き方」は存在できないのです。ところが——。

唯一の例外が「魚介類」

その例外が「魚介類」です。消費者庁の通知(「アレルゲンを含む食品に関する表示」)には、こう書かれています。

網で無分別に捕獲したものをそのまま原材料として用いるため、どの種類の魚介類が入っているか把握できないという製造工程上の理由から、「たんぱく加水分解物(魚介類)」、「魚醤(魚介類)」、「魚醤パウダー(魚介類)」、「魚肉すり身(魚介類)」、「魚油(魚介類)」、「魚介エキス(魚介類)」の6つに限り、例外的に認めることとする。

消費者庁「アレルゲンを含む食品に関する表示」より

ポイントは2つあります。

①使える原材料は6つだけ。魚肉すり身・魚油・魚介エキス・魚醤・魚醤パウダー・たんぱく加水分解物。どれも「いろいろな魚をまとめて加工する」タイプの原料です。かまぼこの原料になるすり身も、ナンプラー(魚醤)も、だしに使われる魚介エキスも、特定の一種類の魚から作るとは限りません。

②理由は「特定できないから」。巻き網などでいろいろな魚介類を一度に獲り、そのまま加工原料にする。獲れる魚はロットごとに変わるので、「今回のすり身に何の魚が入っているか」を正確に言い切れない。だから、書けない事実を偽らずに伝える方法として「(魚介類)」というまとめ書きが、特別に認められています。

「ぼんやりした書き方は禁止」という世界の中で、「正直に『分からない』と書くための特例」がひとつだけ用意されている——それが「魚介類」の正体です。

「魚介類」の中には、何が隠れているのか

では、アレルギーのある人の目線で見ると、この表記はどう読めばいいのでしょうか。

まず、推奨品目の魚介たち——さけ・さば・いか・あわび・いくらなど。これらは「魚介類」の中に、個別に名前が出ないまま含まれている可能性があります。推奨品目はもともと表示が任意なので、特定できない以上、書かれることはありません。

次に、義務品目のえび・かに。これは扱いが少し違います。入っていることが分かっていれば表示義務があります。ただし、網でまとめて獲る際にえびやかにが混ざり込む場合については、「えび・かにが混ざる漁法で採取しています」といった注意喚起の表示が「望ましい」とされる運用です。つまり、義務品目であっても、混獲についてはラベルに必ず現れるとは限りません。

まとめると、「魚介類」という表記は「魚も、いかも、貝も、何が入っているかは特定できません」という正直な申告です。魚介系のアレルギーがある方は、この表記のある食品は避けるのが安全、と覚えておいてください。

手づくり食品を売る側は、ここに気をつけて

手づくり食品を販売する方にとっても、「魚介類」は他人事ではありません。たとえば、こんな場面で出会います。

  • 仕入れ材料の裏を見る:ちくわ・かまぼこなどの練り物、ナンプラー、だし・シーフードエキス入りの調味料。原材料に「(魚介類)」があったら、それはあなたの商品にも引き継がれる情報です。
  • 勝手に“翻訳”しない:自分のラベルに書き写すとき、「魚介類」を「たぶんイワシだろう」と具体的な魚名に置き換えてはいけません。分からないものは、分からないまま正しく引き継ぐのが誠実な表示です。
  • 聞かれたときの答え方:お客さまに「魚は何が入っていますか?」と聞かれたら、「原料の表示が『魚介類』となっており、魚種までは特定できません」が正確な答えです。あいまいに「大丈夫だと思います」と答えるのがいちばん危険です。
  • 避けたいなら材料選びで:魚介アレルギーのお客さまが多い商品なら、そもそも「(魚介類)」表記のない材料を選ぶという選択もあります。

まとめ

  • アレルゲン表示は現在29品目(義務9・推奨20)。2026年4月からカシューナッツが義務に。
  • 「魚介類」はどの品目でもない、特例のまとめ表記。使えるのは魚肉すり身・魚油・魚介エキス・魚醤・魚醤パウダー・たんぱく加水分解物の6つだけ。
  • 理由は「網でまとめて獲るため、何の魚介類か特定できない」から。正直に“分からない”と伝えるための表記。
  • 魚介系アレルギーの方はこの表記に注意。売る側は、仕入れ材料の表示確認と「翻訳しない」引き継ぎを。

ラベルの片隅の4文字にも、ちゃんと理由がある。そう思って眺めると、食品表示はぐっと面白くなります。

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