「市販のチョコに入っている乳化剤や香料、自分のクッキーの表示にも書くの?」
「道具をアルコールで消毒したら、添加物として書かないといけない?」
手作りのお菓子を売ろうとして表示を作り始めると、こんなところで手が止まります。言葉としては知っていても、自分の商品にあてはめようとすると迷う、作る人ならほぼ全員がぶつかる疑問です。
カギになるのは、「キャリーオーバー」と「加工助剤」という2つのルールです。この記事では、中級食品表示診断士のリーリーが、食品表示基準と消費者庁のQ&Aで確かめながら、図と表でやさしくまとめました。
先に結論:市販の材料の添加物は「原則書く」
まず原則:材料の中の添加物も「自分の商品の添加物」
添加物は、自分で加えたものだけでなく、市販の材料に最初から入っていたものも含めて表示するのが原則です。たとえば、乳化剤と香料が入った市販のチョコレートを刻んでクッキーに入れたら、その乳化剤と香料はクッキーの添加物として書きます。
ここでよくある間違いが、書く場所です。チョコレートのカッコの中に添加物まで書いてしまう人が多いのですが、消費者庁のQ&Aでは、材料に入っていた添加物も自分で加えた添加物とまとめて、添加物の欄(「/」の後ろ)に書くと答えています(食品表示基準Q&A 加工-74)。
添加物をチョコレートのカッコの中に入れてしまっている
材料の添加物は「/」の後ろに、自分で加えた添加物とまとめて重い順に
※ 例は説明用です。チョコレートの乳化剤は大豆由来という設定にしています。
では、どんなときに「書かなくてよい」になるのか。それが次の2つの例外です。
例外①キャリーオーバーってなに?
キャリーオーバーは、ひとことで言うと「材料を作るときに使われた添加物が、自分の商品の中では効き目が出ないくらいしか残っていないもの」です。食品表示基準では、次の3つをすべて満たすものと決められています(食品表示基準 第3条)。
(書かなくてよい)
消費者庁のQ&Aには、こんな例が出ています。油揚げのもとになる豆腐を作るときに使った豆腐用凝固剤は、その油揚げをしょうゆや砂糖で味付けした「すし揚げ」では、もう固める働きをしていません。なので、すし揚げではキャリーオーバーになり、表示はいりません(食品表示基準Q&A 加工-87)。
味・香り・色に関わる添加物は、キャリーオーバーにならない
ここが一番の落とし穴です。調味料・甘味料・香料・着色料のように、味や香り、色といった五感にうったえる添加物は、ほんの少しでも最終的な商品に効果を出していると考えられるので、キャリーオーバーにはなりません。
Q&Aでは、甘味料や調味料(アミノ酸)が入ったみそを煮物に少しだけ使った場合でも、煮物の表示に甘味料や調味料を書く必要があると答えています(食品表示基準Q&A 加工-92)。
| 材料に入っていた添加物 | キャリーオーバーになる? |
|---|---|
| 調味料(アミノ酸など)・甘味料 | ならない → 書く |
| 香料・着色料 | ならない → 書く |
| 自分でも同じ添加物を加えている | ならない → 書く(②を満たさない) |
| 上のどれにもあたらず、商品の中では効果を出せないほど少ない | なる場合がある → 書かなくてよい |
例外②加工助剤ってなに?
加工助剤は、作る途中で使うけれど、できあがった商品にはほとんど残らない・影響しない添加物です。食品表示基準では、次の3つのどれかにあたるものとされています(食品表示基準 第3条)。
キャリーオーバーが「材料の中に入っていた添加物」の話なのに対して、加工助剤は「自分が作る途中で使った添加物」の話です。ここを分けて考えると、2つの違いがすっきりします。
| キャリーオーバー | 加工助剤 | |
|---|---|---|
| 誰が使った? | 材料のメーカー | 自分(その商品を作る途中で) |
| どんなもの? | 材料から持ちこまれ、商品の中では効き目が出ないほど少ない | 作る途中で使い、取り除かれる・変わる・影響しない |
| 表示 | いらない | いらない |
| アレルゲン | 表示が必要 | 表示が必要 |
アレルギーの表示には例外がない
キャリーオーバーや加工助剤で添加物の表示がいらなくなっても、その添加物がアレルゲン由来なら、アレルギーの表示は必要です(食品表示基準Q&A 別添アレルゲン B-10、同 加工-74)。
- 表示が義務のアレルゲン(特定原材料)に由来する場合 → 必ず表示
- 表示が推奨のアレルゲン(特定原材料に準ずるもの)に由来する場合 → できるだけ表示
たとえば、材料に入っていた大豆由来の乳化剤がキャリーオーバーにあたって「乳化剤」を書かなかったとしても、「(一部に大豆を含む)」は残す、ということです。アレルギーはごく少量でも症状が出ることがあるので、ここだけは例外がありません。
道具をアルコール消毒したら、添加物として書く?
お菓子作りでは、型やボウル、作業台、袋や容器をアルコールで消毒することがよくあります。これが添加物になるかどうかは、「食品そのものに使ったかどうか」で分かれます。
食品衛生法では、添加物を「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物」と決めています(食品衛生法 第4条第2項)。つまり、添加物になるのは食品に使ったものです。
| アルコールの使い方 | 表示は? |
|---|---|
| 🔪 包丁・ボウル・型・作業台など道具を消毒し、乾いてから使った | いらない 食品に使っていないので添加物にあたらない |
| 🛍️ クッキーの袋やプリンのカップなど容器を消毒し、乾いてから食品を入れた | いらない 容器をきれいにしただけ |
| 🍮 プリンや茶碗蒸しの泡を消すために、加熱する前に吹きかけた | いらない場合が多い 加工助剤の考え方 |
| 🧁 焼き上がったお菓子やケーキに直接吹きかけた(カビを防ぐ・日持ちさせるなど) | 原則いる 「アルコール」「エタノール」「酒精」など |
| 📦 袋に吹きかけて、アルコールを残したまま封をした | 原則いる 直接吹きかけたのと同じ扱い |
| 🥃 ラム酒などのお酒を材料として入れた | 添加物ではなく原材料 原材料名に「洋酒」「ラム酒」など |
菌を抑える目的でも、道具や容器ならいらないの?
いりません。分かれ目は使う目的ではなく、アルコールが何に働きかけているかです。法律の「保存の目的」は食品そのものを長持ちさせることを指していて、道具や容器をきれいにするのは衛生管理の話です。洗剤で洗ったボウルや、漂白剤で消毒したまな板を原材料名に書かないのと同じ考え方です。
法律では、包丁やボウルは「器具」、クッキーの袋やプリンのカップは「容器包装」と呼ばれ、どちらも食品とは別のものとして決められています(食品衛生法 第4条第4項・第5項)。アルコールが乾いてから使う・入れるようにすれば、お菓子に移ることもほぼありません。
プリンや茶碗蒸しの泡消しは?
こちらは食品に直接使っているので、添加物として使ったことになります。そのうえで、吹きかける量はごく少なく、そのあと蒸したり焼いたりする間にアルコールはほとんど飛び、泡を消す働きもできあがった商品には残りません。これは加工助剤の「完成前に取り除かれるもの」「量が少なく、商品に影響しないもの」の考え方にあてはまり、表示はいらない場合が多いと考えられます。カステラを包むときの二酸化炭素が「商品に残らないので加工助剤」とされているのと同じ考え方です(食品表示基準Q&A 加工-86)。
- 加熱する前に吹きかけること(加熱の後だとアルコールが残ります)
- 使うアルコール製剤の成分を確認すること(エタノール以外の成分が入った製剤もあり、その成分の種類や量によっては表示が必要になる場合があります)
- 表示がいらなくても、使っていれば「無添加」とは書けないこと
袋に残したまま封をすると、なぜ必要?
袋の中にアルコールを残して封をし、その成分でカビを防ぐやり方は、狙いが中のお菓子を長持ちさせることです。アルコールはお菓子の表面にも移ることがあり、日持ちの効果が残ることが目的なので、お菓子に直接吹きかけたのと同じように考えるのが安全です。
食品用のアルコール製剤の業界団体(日本食品洗浄剤衛生協会)も、食品に加えて使う場合は「アルコール」「エタノール」「エチルアルコール」または「酒精」と表示し、加工助剤として使う場合は表示がいらない、と案内しています。
また、お菓子に直接使うなら、パッケージに「食品添加物」と書かれた食品用のアルコール製剤を選びましょう。手指用や掃除用の消毒液は、食品に使うことを前提に作られていません。
「無添加」「保存料不使用」と書きたいときの落とし穴
キャリーオーバーや加工助剤で表示がいらなくても、添加物を使っていることに変わりはありません。消費者庁は、こうした場合に「添加物を使用していない」と表示することはできないとしています(食品表示基準Q&A 加工-90)。
- 材料の一部に保存料が使われているのに、商品に「保存料不使用」と書く → ×
- 材料の作る段階で添加物が使われていないか確かめられないのに、「無添加」と書く → ×
- お菓子にアルコールを吹きかけているのに、「無添加」と書く → ×
消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」でも、キャリーオーバーや加工助剤として添加物が使われている(または使われていないことを確かめられない)食品への「無添加」「不使用」の表示は、誤解をまねくおそれが高い例として挙げられています。「無添加」と書くなら、材料のメーカーまでさかのぼって確かめることが前提です。
自分の商品で判断するときのチェックリスト
まとめ
表示を作るときによくある間違いはハンドメイドお菓子を売る前に。食品表示でよくある間違い9選に、表示の作り方の全体の流れは食品表示の作り方にまとめています。添加物の書き方をクイズで確かめたい方は添加物の表示クイズ5問もどうぞ。
🏷️ お菓子の食品表示ラベルを無料で作る材料の添加物、書き方は合っていますか?
中級食品表示診断士(食品表示検定中級合格)のリーリーが、販売前の表示を一項目ずつ点検して、直したほうがよい箇所を報告書でお返しします。市販の材料の添加物やアレルゲンの書き方も確認します。一から作ってほしい方向けの作成もあります。
レシピから作ってほしい方は一括表示の作成サービス、ココナラ以外ならお問合せフォームからどうぞ。
出典:食品表示基準 第3条(添加物の項)/消費者庁「食品表示基準Q&A」加工-74・86・87・90・92/消費者庁「食品表示基準Q&A」別添 アレルゲンを含む食品に関する表示 B-10/消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」/食品衛生法 第4条第2項・第4項・第5項/東京都保健医療局「食品衛生の窓」加工食品(添加物)/日本食品洗浄剤衛生協会「アルコール製剤(食品添加物)について」/福岡市保健環境研究所報「加工食品中のシリコーン樹脂の残留実態調査」

コメント