冷凍ケーキを販売するには?許可・表示・菌の基準をやさしく解説

冷凍ケーキを売る前に 許可・表示・菌の基準 販売者向け

「焼いたチーズケーキを冷凍して、通販で送りたい」
「冷凍しておけば日持ちするし、遠くのお客さんにも届けられる」

そう考えたことはありませんか? 実はケーキは、凍らせて袋や箱に入れ、凍ったまま売った時点で、法律上は「冷凍食品」になります。すると、表示も、守らなければいけない菌の基準も、保存の温度も変わります。

つまり、いつものケーキをただ冷凍庫に入れて、そのまま発送するだけでは、売ってよい状態とはいえないんです。

この記事では、中級食品表示診断士のリーリーが、冷凍ケーキを売る前に知っておきたいことを、法律の原文を確かめながら、図と表でやさしくまとめました。

先に結論:冷凍して売ると、この4つが変わります

🏠営業許可
冷凍しないケーキ菓子製造業
▼
冷凍して売るケーキ菓子製造業のままでOK
(冷凍の設備の条件が追加)
🏷️表示
冷凍しないケーキふつうの一括表示
▼
冷凍して売るケーキ「冷凍食品」「加熱の必要はありません」などを追加
🔬菌の基準
冷凍しないケーキ国が決めた数値の基準はなし
▼
冷凍して売るケーキ一般生菌 1gあたり10万以下
大腸菌群が陰性
🌡️保存温度
冷凍しないケーキ商品に合わせて決める
▼
冷凍して売るケーキマイナス15℃以下

ひとつずつ、見ていきましょう。

そもそも「冷凍食品」ってどういうもの?

「冷凍食品には4つの条件がある」と聞いたことがあるかもしれません。でもそれは業界の決まりで、法律の決まりとは別ものです。並べてみると、違いがよくわかります。

業界の「4つの条件」
日本冷凍食品協会が紹介している、品質を守るための基準
1前処理している(洗う・切る・調理するなど)
2急速凍結している(マイナス30〜40℃で一気に)
3適切に包装している
4マイナス18℃以下で保管している
→ おいしさと品質のための業界の自主的な基準。法律ではありません。
法律(食品衛生法)の冷凍食品
食品、添加物等の規格基準での決め方
1作ったり加工したりした食品を凍らせた
2容器包装に入れた
→ この2つだけ。急速に凍らせたかどうかは、条件に入っていません。

つまり、家庭用の冷凍庫でゆっくり凍らせたケーキでも、袋や箱に入れて凍ったまま売れば、法律上は冷凍食品です。「急速冷凍していないから冷凍食品じゃない」とはなりません。

🍰ケーキを作る
▶
❄️凍らせる
家庭用の冷凍庫でも
▶
📦袋や箱に入れる
▶
🧊凍ったまま売れば
法律上の冷凍食品

ここがいちばんの落とし穴です。「冷凍庫に入れただけ」でも冷凍食品のルールはかかる。だから、ルールに合わせた準備をしないと売れない、というわけです。

※アイスクリーム類は冷凍食品とは別のルールです。また、冷凍で仕入れたケーキをお店で解凍して冷蔵で並べる場合は、冷凍食品ではなく、そのとき売る状態に合った表示に変える必要があります(食品表示基準Q&A 加工-181-1)。

許可はいる?——菓子製造業のままでOK。ただし条件つき

営業許可には「冷凍食品製造業」という種類もあります。でもこれは、主におかず(そうざい)を冷凍するための許可です。

厚生労働省のQ&Aでは、お菓子の冷凍食品を作るなら、菓子製造業の許可だけで製造できると答えています。新しい許可を取り直す必要はありません。

🏠 菓子製造業の許可
+
🧊 冷凍の設備の条件
=
🍰 冷凍ケーキを作れる

追加される設備の条件は、次の4つです(食品衛生法施行規則 別表第十九)。

  • 原材料の保管、下ごしらえ、製造、冷凍、包装、保管をする場所があり、作業ごとに区切られていること
  • 原材料を保管する場所に、冷蔵または冷凍の設備があること
  • 作るものに合わせて、加熱・冷ますなどに必要な設備があること
  • 商品をマイナス15℃以下に管理できる冷凍室と保管室があること

いまの許可の施設で冷凍ケーキを始めるときは、先に管轄の保健所に相談しておくと安心です。

表示はどう変わる?——ラベルで見てみよう

チーズケーキを冷凍して売る場合の表示例です。青いマーカーの部分が、冷凍して売るときに変わるところです。

冷凍食品1
名称チーズケーキ(加熱の必要はありません)2
原材料名クリームチーズ(国内製造)、クリーム、砂糖、卵、小麦粉、(一部に乳成分・卵・小麦を含む)
内容量350g
賞味期限2026.12.203
保存方法-18℃以下で保存してください3
製造者(氏名または名称と住所)
1 冷凍食品であることを書く
2 食べるときに加熱がいるかどうかを書く
3 保存方法と期限を、冷凍して保存する前提に直す

※原材料名は、使った重さの多い順に書きます(例はイメージです)。アレルゲンの書き方など、一括表示のほかの項目は食品表示の作り方を見てください。

①「冷凍食品」と書く

名称とは別に、冷凍食品であることを表示します(消費者庁の通知「食品表示基準について」)。一括表示の近く(枠のすぐ上など)に書くと、ひと目でわかります。

②食べるときに加熱がいるかどうか

ケーキのように解凍してそのまま食べるものは、「加熱の必要はありません」のように、名称に並べて書くなどして表示します(食品表示基準)。

ちなみに「凍結直前加熱」「凍結直前未加熱」という表示は、加熱して食べる冷凍食品だけのものです。そのまま食べるケーキには必要ありません。

③保存方法と期限を、冷凍用に直す

冷凍食品は、法律でマイナス15℃以下で保存するよう決まっています。保存方法の表示もこの基準に従って、「-15℃以下で保存してください」、または業界の目安に合わせて「-18℃以下で保存してください」のように書きます。どちらを書くかは、自分の冷凍庫で実際に保てる温度に合わせて選びましょう(くわしくは下の「冷凍庫は何℃ならいい?」で)。

期限も、冷凍して保存したときの期限を決め直します。決め方は手作りお菓子の賞味期限の決め方で解説しています。

「解凍後は冷蔵庫で保存し、その日のうちにお召し上がりください」のような解凍後の注意は、法律の義務ではありませんが、書いておくとお客さんに親切です。

菌の基準——検査で確かめます

解凍してそのまま食べる冷凍食品(法律では「無加熱摂取冷凍食品」)には、国が決めた菌の基準があります。冷凍しないケーキと比べると、こうなります。

菌の種類冷凍して売るケーキ
(法律の基準)
冷凍しないケーキ
(法律の基準)
検査で
調べる
🦠 一般生菌
(細菌数)
1gあたり
10万以下
なし◎
🦠 大腸菌群陰性
(見つからないこと)
なし◎
🦠 黄色ブドウ球菌なしなし○
できれば

◎=基準があるので必ず確かめたい ○=基準はないが、調べておくと安心

一般生菌と大腸菌群は、両方とも基準を満たす必要があります。「大腸菌群は見なくていい」と聞いたことがあるかもしれませんが、それは加熱して食べる冷凍食品の一部(大腸菌群ではなく「E.coli」で判断するもの)や、冷凍パン生地の話。そのまま食べるケーキには当てはまりません。

黄色ブドウ球菌は?

冷凍食品の基準には入っていません。以前は国の指針「洋生菓子の衛生規範」に「黄色ブドウ球菌が陰性」という目安がありましたが、この指針は2021年6月に廃止されました。

とはいえ、黄色ブドウ球菌は手指などから食品に入りやすい菌です。デコレーションなど手で触る作業が多いケーキでは、検査のメニューに入っていれば一緒に調べてもらうと安心です。

検査はどうする?

検査の回数は、法律では決まっていません。でも、基準を満たしているかどうかは、検査しないとわかりません。売り始める前に、食品の検査機関に依頼して確かめておきましょう。作り方や材料を変えたときも、もう一度確かめると安心です。検査をしたら、その結果の記録も保存しておきましょう(食品衛生法施行規則 別表第十七で、記録の保存に努めるよう定められています)。

冷凍しないケーキには、国が決めた菌の数値の基準がありません。冷凍して売ることで、はじめて法律の数値基準がかかる——ここも見落としやすいポイントです。

冷凍庫は何℃ならいい?

-15℃
以下
法律ここは必ず守るライン
冷凍食品の保存の基準・施設の基準
-18℃
以下
業界の目安作ってから売るまでずっと、この温度で保管
(日本冷凍食品協会)
-30〜
-40℃
業界の目安急速凍結の温度
義務ではない品質を保つための工夫

法律で守らなければいけないのはマイナス15℃以下です。ただ、冷凍庫はドアの開け閉めで温度が上がるので、余裕をもってマイナス18℃以下を目安にし、温度計で毎日の温度を記録しておくのがおすすめです。

表示に「-18℃以下で保存」と書くなら、自分の冷凍庫・保管庫も-18℃以下で管理しましょう。期限は「表示されている保存方法で保存した場合の期限」だからです(消費者庁 食品表示基準Q&A)。冷凍庫が-15℃までしか冷えないなら、表示も「-15℃以下で保存してください」にすれば、表示と実際がそろいます。

急速冷凍は法律の義務ではありません。ただ、ゆっくり凍らせると食品の組織が傷みやすく、解凍したときの品質が落ちやすくなります。品質にこだわるなら、急速冷凍できる設備があると心強いです。

売り始めるまでの準備チェックリスト

🏥
1. 保健所に相談する
冷凍の設備の条件を満たしているか確認
🧊
2. 冷凍・保管の設備をそろえる
マイナス15℃以下(表示を-18℃にするなら-18℃以下)を保てるもの+温度計
❄️
3. 急速冷凍の設備を検討する
義務ではない品質を保つために
🔬
4. 菌の検査を依頼する
一般生菌・大腸菌群。できれば黄色ブドウ球菌も
📅
5. 期限を決め直す
冷凍で保存したときの期限に
🏷️
6. 一括表示を見直す
「冷凍食品」「加熱の必要はありません」、保存方法、期限
🚚
7. 冷凍便で送る
お客さんに届くまで凍ったまま(ヤマト運輸のクール宅急便・冷凍タイプは-15℃以下の設定)

もうひとつ、急速冷凍したケーキを冷凍食品として、袋などに密封して売る場合は、計量法で内容量をグラムで書くことが必須になり、「量目公差」という重さのルールもかかります(経済産業省 商品量目制度Q&A 分類-1・分類-60)。くわしくは量目公差の早見表で解説しています。

こうして並べると、冷凍ケーキは思ったよりハードルが高いですよね。全部そろえるのは正直たいへんです。まずは冷凍しないお菓子で始めて、売れ行きを見ながら冷凍に広げる——そんな順番も、立派な選択です。

まとめ

・ケーキを袋や箱に入れて凍ったまま売ると、急速冷凍でなくても法律上は冷凍食品
・許可は菓子製造業のままでOK。ただしマイナス15℃以下に管理できる冷凍室・保管室などの条件が追加
・表示は「冷凍食品」「加熱の必要はありません」を書き足し、保存方法と期限を冷凍用に
・菌の基準は一般生菌1gあたり10万以下・大腸菌群陰性。検査で確かめる
・保存は法律でマイナス15℃以下。業界の目安はマイナス18℃以下

冷凍に切り替えるときの表示、見てもらいませんか?

中級食品表示診断士(食品表示検定中級合格)のリーリーが、販売前の表示を一項目ずつ点検して、直したほうがよい箇所を報告書でお返しします。一から作ってほしい方向けの作成もあります。

レシピから作ってほしい方は一括表示の作成サービス、ココナラ以外ならお問合せフォームからどうぞ。

出典:食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)冷凍食品/食品衛生法施行令 第35条/食品衛生法施行規則 別表第十七・別表第十九/厚生労働省「営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A」問14/厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う営業等の取扱いについて」(令和3年6月1日)/食品表示基準 第3条・第4条・別表第十九/消費者庁「食品表示基準について」/消費者庁「食品表示基準Q&A」加工-181-1/経済産業省「計量法における商品量目制度Q&A集」(令和7年12月)分類-1・分類-60/日本冷凍食品協会「冷食オンライン」/ヤマト運輸「クール宅急便」

コメント

タイトルとURLをコピーしました