この記事は、2026年10月時点の国の資料にもとづいて書いています。
「食品添加物って、なぜ使うの?」「体に悪いって聞くけど、メリットもあるの?」
添加物にはなんとなく悪いイメージがありますが、加工食品の多くに使われているのには理由があります。じつは国が新しい添加物を認めるときの指針には、添加物は「消費者に何らかの利点を与えるもの」でなければならないと書かれています。
この記事では、中級食品表示診断士のリーリーが、食品添加物のメリット・デメリットと用途別の役割一覧を、国の資料にもとづいてわかりやすく整理します。
結論:食品添加物のメリット・デメリット
| メリット | デメリット・気をつけたいこと |
|---|---|
| 食中毒を防ぎ、日持ちをよくする | 体質によって注意が必要なものがある(例:アスパルテーム) |
| 豆腐や中華麺など、それがないと作れない食品もある | アレルギーの原因になる食品から作られた添加物もある |
| 食感・味・香り・見た目を整える | 表示されない添加物もある(加工助剤など) |
| 砂糖をひかえる・栄養を補う・値段をおさえる | 見た目や味を整えられる分、素材の違いが外からわかりにくい |
くわしく見ていく前に、まず「国がどんな条件で添加物を認めているのか」から確認しましょう。
「なぜ使われているのか」を知ると、原材料名の見え方が変わりますよ。
食品添加物はなぜ使う?国が指定する条件は「安全」と「役に立つこと」
国が新しく添加物を指定したり、使い方の基準を変えたりするときの考え方は、「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針」にまとめられています(2022年に厚生労働省が改正したもの。2024年4月からは、添加物の基準づくりは消費者庁が担当しています)。そこには、こう書かれています。
食品添加物は、人の健康を損なうおそれがなくかつその使用が消費者に何らかの利点を与えるものでなければならない。
「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針」(令和4年9月29日改正、消費者庁ウェブサイト掲載)
そのうえで、「役に立つ」とは次の4つのどれかに当てはまることだ、と決められています。
| 役に立つこと(指針の内容) | たとえば(リーリーの例) |
|---|---|
| 栄養が失われるのを防ぐ・保つ 原文:食品の栄養価を保持するもの | 酸化防止剤、ビタミンなどの強化剤 |
| 食事に気をつけている人向けの食品を作る 原文:特定の食事を必要とする消費者のための食品の製造に必要な原料又は成分を供給するもの | 砂糖をひかえた食品に使う甘味料 |
| 傷みにくくする・品質をそろえる・おいしそうにする 原文:食品の品質を保持し若しくはその安定性を向上させるもの又は味覚、視覚等の感覚刺激特性を改善するもの | 保存料、乳化剤、着色料、調味料 |
| 作る工程を助ける 原文:食品の製造、加工、調理、処理、包装、運搬又は貯蔵の過程で補助的役割を果たすもの | 豆腐の凝固剤、中華麺のかんすい |
反対に、食品の本質や品質を変えて消費者に誤解させるおそれがある使い方や、質の悪い原料や不衛生な作り方をごまかすための使い方は認めない、とも書かれています。さらに、作り方を比較的安く変えるだけで添加物がいらなくなる場合も、役に立つとは認めないとしています。
食品添加物のメリット(主な役割)

1. 食中毒を防ぐ・日持ちさせる
保存料は、食品を傷ませる細菌やカビが増えるのをおさえます(殺菌するものではありません)。酸化防止剤は、油などが空気で酸化して、色や風味、栄養が落ちるのを防ぎます。日持ちがよくなれば、食べきれずに捨てる量を減らすことにもつながります。
たとえばハムやソーセージに使われる発色剤の亜硝酸ナトリウム。名前のとおり色をきれいに保つ役割もありますが、厚生労働省は2009年に、ボツリヌス菌をはじめ、多くの種類の細菌が増えるのをおさえ、食肉製品が腐るのを防ぐ働きもあると説明しています。
2. それがないと作れない食品もある
ふだん何気なく食べているものの中には、添加物がないと、そもそもその食品にならないものもあります。
| 食品 | 使われる添加物 | 役割(消費者庁の通知より) |
|---|---|---|
| 豆腐 | 豆腐用凝固剤(にがり=塩化マグネシウムなど) | 豆乳を豆腐の形に固める |
| 中華麺 | かんすい | 中華麺を作るときに使うアルカリ剤 |
| 焼き菓子・蒸しパンなど | 膨脹剤(ベーキングパウダー、重曹など) | ガスを出して生地をふくらませ、食感をよくする |
手作りのお菓子でベーキングパウダーを使うのも、じつは添加物を使っているということです。
手作りお菓子を売る方へ【初心者向け】手作りお菓子の食品表示の作り方|今日から一括表示が作れる6ステップ3. 食感や品質をそろえる
乳化剤は、本来は混ざりにくい水と油を混ぜて、分離しないようにします。増粘剤やゲル化剤は、とろみをつけたり、ゼリーのように固めたりします。
毎回同じなめらかさ、同じ口あたりの商品を、たくさん安定して作れるのは、こうした添加物のおかげでもあります。
4. おいしそうに見せる・おいしくする
「調味料(アミノ酸等)」はうまみを足し、香料は香りを、着色料は色を整えます。見た目や香りは、おいしさの感じ方に大きく関わる要素です。
ただ、ここは好みが分かれるところでもあります。色や香りをどこまで求めるかは、人それぞれ。気になる方は、原材料名で選べば大丈夫です。
5. 少しの量ですむ・砂糖をひかえられる
甘味料の中には、砂糖よりずっと強い甘さを持つものがあります。たとえばスクラロースは、砂糖の600倍ほどの甘さがあるとされています。
少しの量で甘さを出せるので、砂糖をひかえた商品やカロリーをおさえた商品を作ることができます。使う量が少ないことは、材料の費用をおさえることにもつながります。
6. 栄養を補う
ビタミンやカルシウム、鉄などを加えて、食品の栄養を補う使い方もあります(強化剤)。消費者庁のQ&Aでは、栄養を強化した食品には、その栄養成分の量も表示することが望ましいとしています。
7. そして「値段をおさえる」ことにもつながる
ここまでの役割をまとめると、添加物があることで手間や材料をおさえ、品質の安定した商品をたくさん作れるようになります。
- 作る工程がスムーズになり、手間や時間をへらせる
- 少しの量で効果が出るので、材料の量をおさえられる
- 日持ちすることで、まとめて作っておける・遠くまで運べる・売れ残りによる廃棄がへる
こうしたことが積み重なって、私たちが手に取りやすい値段で、いつでも同じ品質の食品を買えることにつながっています。国の指針が「作り方を安く変えれば添加物がいらなくなる場合は認めない」としているのも、裏を返せば、添加物が手間や費用の面でも意味のあるものとして使われている、と読み取れます。
食品添加物の役割一覧(用途別)
原材料名の「/」の後ろによく出てくる添加物を、用途ごとにまとめました。保存料や甘味料などは、何のために使ったか(用途名)と物質名をいっしょに書く決まりがあります。
| 用途 | 主な役割 | 原材料名での書き方の例 |
|---|---|---|
| 保存料 | 細菌やカビが増えるのをおさえ、日持ちをよくする | 保存料(ソルビン酸K) |
| 酸化防止剤 | 酸化による色・風味・栄養の低下を防ぐ | 酸化防止剤(ビタミンE) |
| 発色剤 | ハムなどの色を保つ。細菌が増えるのもおさえる | 発色剤(亜硝酸Na) |
| 着色料 | 色をつける・整える | 着色料(クチナシ) |
| 甘味料 | 甘みをつける | 甘味料(スクラロース) |
| 増粘剤・安定剤・ゲル化剤 | とろみをつける・形を保つ・固める | 増粘剤(キサンタンガム) |
| 調味料 | うまみなどの味をつける | 調味料(アミノ酸等) |
| 香料 | 香りをつける | 香料 |
| 乳化剤 | 水と油を混ぜて、分離を防ぐ | 乳化剤 |
| 膨脹剤 | 生地をふくらませ、食感をよくする | 膨脹剤 |
| かんすい | 中華麺を作るときに使うアルカリ剤 | かんすい |
| 豆腐用凝固剤 | 豆乳を豆腐の形に固める | 豆腐用凝固剤(または凝固剤) |
用途名をいっしょに書く8つの用途(甘味料・着色料・保存料・増粘剤など・酸化防止剤・発色剤・漂白剤・防かび剤)と、グループの名前(一括名)だけで書ける用途は、食品表示基準で決められています。
クイズで確かめる原材料の「/」の後ろは何?添加物の表示クイズ5問|無塩せき・「保存料(○○)」・無添加の意味食品添加物のデメリット・気をつけたいこと
メリットがある一方で、知っておきたいこともあります。どれも「こわいもの」ではなく、表示を見て選ぶときに役立つ知識です。
体質によって注意が必要なものがある
たとえば甘味料のアスパルテームには、フェニルアラニンという成分が含まれます。この成分を体の中でうまく分解できない体質(フェニルケトン尿症)の人のために、アスパルテームを使った食品には「L-フェニルアラニン化合物を含む」と書く決まりがあります。
アレルギーの原因になる食品から作られた添加物もある
添加物の中には、大豆や乳などから作られるものもあります。その場合は、「乳化剤(大豆由来)」のように、何から作られたかを書く決まりになっています。食物アレルギーのある方は、添加物のかっこの中も見ておくと安心です。
表示されない添加物もある
作る途中で使って完成前に取り除かれるものなど(加工助剤)や、原材料を作るときに使われ、できた食品の中では効果が出ない量しか残っていないもの(キャリーオーバー)は、表示しなくてよいことになっています。つまり、原材料名に書いてある添加物がすべてとは限りません。
あわせて読みたいキャリーオーバーと加工助剤の違い|市販の材料の添加物は書く?道具のアルコール消毒は?見た目や味を整えられる分、素材の違いがわかりにくい
色や香り、うまみを整えられるということは、外から見ただけでは素材の違いがわかりにくい、ということでもあります。だからこそ国の指針でも、食品の本質や品質を変えて消費者に誤解させる使い方は認めないとしています。気になるときは、原材料名で何が使われているかを確かめましょう。
「体に悪い」と言われやすい理由
カタカナや見慣れない名前が多いと、それだけで不安に感じやすいものです。ただ、添加物の安全性は、食品安全委員会が動物実験などのデータをもとに評価し、一生毎日とり続けても健康への悪影響がないと考えられる量(一日摂取許容量:ADI)を決めています。国(消費者庁)は、必要に応じて成分の規格や使ってよい食品や量(使用基準)を決めたうえで使用を認め、使われている添加物を国民がどれくらいとっているかの調査も続けています。
「たくさんの添加物を一緒にとって大丈夫?」という疑問については、食品安全委員会の調査報告(2007年)で、複数の添加物を一緒にとることによる健康への影響は、実際に起こる可能性は極めて低く、現実的な問題ではなく、理論的な可能性の推定にとどまるとまとめられています。
気になる人は、表示を見て自分で選べる
添加物は、原則として原材料名の欄(または添加物の欄)に表示されます。添加物をひかえたい人はひかえる、気にしない人は便利さや値段をとる。どちらも、表示を読めば自分で決められます。
原材料名の「/」の後ろを見て、自分なりの基準で選べばOKです。
まとめ:食品添加物のメリット・デメリット
- 食品添加物を使う理由:国が新しく添加物を指定するときの指針では、「安全」かつ「消費者に何らかの利点を与える」ものでなければならないとされている
- メリット:食中毒を防ぐ・日持ちさせる、それがないと作れない食品を作る、品質をそろえる、おいしくする、少しの量ですむ、栄養を補う、値段をおさえることにもつながる
- デメリット・気をつけたいこと:体質によって注意が必要なもの、アレルギーの原因になる食品から作られたもの、表示されない添加物がある、素材の違いがわかりにくい
- 安全性は食品安全委員会がADIを決めて評価し、国(消費者庁)が使用基準などを決めている。複数の添加物を一緒にとる影響は「理論的な可能性の推定にとどまる」とされている
- 気になる人は、原材料名の「/」の後ろを見て自分で選べる
添加物は「悪者」でも「なくてはならない正義」でもなく、理由があって使われている道具です。理由を知ったうえで、自分に合った選び方をしていきましょう。
出典・参考
- 「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針」(令和4年9月29日 生食発0929第3号による改正、消費者庁ウェブサイト掲載)
- 消費者庁「食品添加物」
- 東京都保健医療局「食品衛生の窓」用途別 主な食品添加物(保存料・酸化防止剤)
- 食品安全委員会「亜硝酸ナトリウム(発色剤)について」(2009年、厚生労働省からのコメント)
- 消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物関係(一括名の定義:かんすい・豆腐用凝固剤・膨脹剤・乳化剤)
- 消費者庁「食品表示基準Q&A」加工-75-2(栄養強化の目的で添加物を使用した食品)
- 食品安全委員会「食品添加物は危ないの?複合的な影響は?」(令和4年11月17日)
- 食品安全委員会「食品添加物の複合影響に関する情報収集調査 報告書」(平成19年3月)
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第3条(アスパルテームを含む食品の表示)、別表第六・別表第七(用途名併記・一括名)
- 消費者庁「食品表示基準について」別添 アレルゲン関係(特定原材料等に由来する添加物の表示)
- 食品安全委員会 食品安全関係情報(オーストリア保健・食品安全局:スクラロースの甘味)


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