「トランス脂肪酸って体に悪いって聞くけど、何が危険なの?」「ショートニングって食品表示でよく見るけど正体は?」——そんな疑問にお答えします。
お菓子やパン、揚げ物に含まれるトランス脂肪酸について、食品表示診断士のリーリーが、こわがりすぎず正しく付き合うための知識を解説します。
トランス脂肪酸ってそもそも何?

トランス脂肪酸は、液体の植物油を加工して固める過程でできる脂肪酸の一種です。油に水素を加えて固める加工(部分水素添加)は、保存性や使いやすさをよくする目的で行われ、トランス脂肪酸はそのときにできる副産物です。油を精製するときの高温処理でも少しできます。簡単に言うと、サラサラの油を固めるときにできるもの。マーガリン、ショートニング、揚げ油などに含まれることがあります(最近の国産のマーガリン類は、製法の見直しでかなり低減されています)。また、牛肉や乳製品にも天然由来のトランス脂肪酸がわずかに含まれます。
ショートニングってなに?

ショートニングは、植物油などを原料にした固形の油脂です。以前は水素を添加して固めたもの(部分水素添加油脂)が中心でしたが、いまはトランス脂肪酸を減らした製品が増えています。白く無味無臭で、サクサクした食感を出すために使われます。
含まれる食品の例:クッキー・パイ・ビスケットなどの焼き菓子、スナック菓子、菓子パン、ドーナツやフライドポテトなどの揚げ物。
トランス脂肪酸が指摘されているリスク

- 心臓病のリスク:悪玉コレステロール(LDL)を増やし、善玉(HDL)を減らすため、動脈硬化や心筋梗塞のリスクを高めるとされる
- 肥満・アレルギー性疾患:食品安全委員会の評価(2012年)では、関連が認められたとされている(そのほかの病気については、はっきりした結論は出ていない)
- 妊娠中:同じ評価で、妊産婦や胎児への健康影響が考えられるとされている
【重要】日本人の平均摂取量は、実は基準内
ここが大切なポイントです。WHOはトランス脂肪酸の摂取を「総エネルギーの1%未満」に抑えるよう勧めていますが、日本人の平均摂取量はこの基準を下回っていると報告されています(農林水産省)。食品安全委員会の評価(2012年)では、日本人の平均はエネルギー比0.31%でした。
つまり、通常の食生活を送っている人が過度に怖がる必要はありません。注意したいのは、洋菓子や揚げ物、菓子パンを毎日たくさん食べるような偏った食生活の場合。「ゼロにする」より「摂りすぎない」を意識するのが現実的です。
食品表示でのチェックポイント

トランス脂肪酸そのものは表示義務がなく、栄養成分表示には書かれないことがほとんどです。原材料名に次の表記があれば、トランス脂肪酸が含まれている可能性があります(ただし低減された製品も多く、この表記だけで量までは分かりません)。
- ショートニング
- マーガリン・ファットスプレッド
- 加工油脂・植物油脂(種類が不明なもの)
- 部分水素添加油脂(硬化油)
なぜ表示の義務がないの?
日本の食品表示基準では、トランス脂肪酸の量を書くことは義務ではありません。表示する場合のルールとして、消費者庁は2011年に「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」を出していて、メーカーが自主的に、栄養成分表示の脂質の下に書くことができます。
かわりに食品表示基準では、飽和脂肪酸と食物繊維の量を、できるだけ表示するようにすすめています(推奨表示)。飽和脂肪酸も、とりすぎると悪玉(LDL)コレステロールを増やすとされる脂肪酸なので、表示があれば合わせて見ておくと参考になります。
摂りすぎを防ぐ日常の工夫

- 「バターなら安心」とは限らない:バターにも天然のトランス脂肪酸が含まれ、国産のマーガリン類は低減が進んでいます(農林水産省の調査)。どちらも脂質が多いので、量を意識して
- 市販の洋菓子は選んで食べる:頻度を減らすか、原材料を確認して選ぶ
- 手作りに切り替える:お菓子やパンに使う油脂を自分で選べる
完全に避けるのは難しいですが、食品表示を意識するだけで摂取量はかなり減らせます。神経質になりすぎず、「知って、選ぶ」を心がけていきましょう。
脂質全体のとりすぎに気をつけるほうが、毎日の食事では役に立ちます。
出典:食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書(2012年)、農林水産省「トランス脂肪酸に関する情報」、消費者庁「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」(平成23年2月21日)、食品表示基準 第6条、消費者庁「食品表示基準Q&A」加工-213


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